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海外粗飼料情勢

輸入粗飼料情勢 / 令和6年2月号

1. 米国産アルファルファヘイ

  • カリフォルニア州南部インペリアルバレー
     この冬、カリフォルニア州周辺では大雨に見舞われており、水源となるカリフォルニア州北部のシャスタ湖、ネバダ州のミード湖、アリゾナ州のパウエル湖の水位は回復に向かっています。2024年に予定されているインペリアルバレーの節水プログラムについて、農業用水の使用量を削減することで金銭的補償と引き換えに、多年生の牧草地や他の農作物への灌漑を夏の2~3ヶ月間停止するプログラムが準備されています。これは任意プログラムであり、参加するかどうかは生産者の自由であるため、乾牧草の需要が旺盛でないことから、大半の乾牧草生産者が参加するのではないかと推測されています。
     通常1番刈りは、2月の下旬から始まり、3月にベーリングされますが、現在、不安定な天候が続いており、今年の1番刈りのスケジュールの見通しは定まっていません。実際に、多くの圃場でクリッピングと呼ばれる、越冬した穂先の枯れた箇所を刈り取る作業が行われましたが、雨が続いている関係から1番刈り作業まで進んでいる圃場は非常に少ないです。
     例年、インペリアルバレーの1番刈りは成分分析の結果も良く、高グレード品が多いのですが、2月に入り雨が続いているため早期に刈り取られた圃場では、降雨ダメージを受けています。天候が安定するのを待っている圃場では、刈り取り適期を逃してしまい、牧草が過熟な状況になることを懸念しています。
  • ワシントン州コロンビア盆地
     2024年1月は、ここ数年で経験したことがないほど寒く、月の大半は氷点下を下回り、1月の中旬には氷点下18℃にもなりました。また、いくつかのブリザードがPNW地域を通過し、標高の低いところでも数インチ、標高の高いところでは、10インチ以上の積雪が観測されました。2月に入り気温が上がり、雪から雨へ変わり、大量の降雨があったため、牧草を保管している生産者の庭先では、地面がぬかるみ、トラックやローダーが立ち往生し、デリバリーを困難にさせています。また、フィードロットや酪農場では、牛がぬかるみから出られるようスペースを確保しようと、安価な繊維源を確保する動きを見せており、麦わら等のストロー類の取引量が産地では増えています。

2. 米国産チモシーヘイ

 ワシントン州乾牧草生産者協会による会合が開催され、この会議では輸出事業者を含む講演者が現在の乾牧草市場について話しました。その中で、西海岸からの乾牧草輸出が昨年対比35%以上減少しており、2023年産在庫は2024年度にも持ち越されるだろうという点で講演者の意見は一致していました。 アルファルファとチモシーの作付面積についても議論され、参加した約25名の生産者からの投票によると、来年の作付け面積は、昨年より作付面積が減ると答えた生産者が多く、市場価格の低迷と生産コストの上昇が、他の作物への切り替えの主な理由でした。
 ZHI(全農ヘイ)では、SDGsへの取り組みの一環として、ビニールラップの削減のためにユニタイズ製品の供給を開始しています。

3. スーダングラス

 主産地であるインペリアルバレーでは、気温が低く、生産者はまだスーダンの作付けを開始していません。スーダンの作付けについては、気温と天候に左右されますが、地中の温度が11℃を超えてくるタイミングで作付けされるため、通常であれば、2月下旬から3月に開始するとの見通しです。
 市場価格が低迷していることを受け、生産者は今年の作付け面積については、まだ明確になっていない模様です。また、2023年産の繰越在庫があり、中には2022年産の繰越在庫を持っている輸出事業者もいるかもしれないと言われています。2024年から始まる節水プログラムは、農業用水の利用を減らす代わりに、生産者へ助成金を出す内容で、より作付け面積を減少させると想定されますが、多くの繰越在庫が産地にはあるため、供給可能な量については未確定です。

4. ストロー類(アニュアル・ペレニアル・フェスク)

 現在、2024年収穫予定の圃場は、順調に生育しています。依然として、韓国国内での在庫が多いため、荷動きは鈍化している模様です。
 ここ数か月、ポートランド港では空コンテナが不足しており、シアトル/タコマ港からのコンテナ船のスケジュール遅延も重なり、デリバリーについては、引き続き注意が必要です。

5. 豪州産オーツヘイ・小麦ストロー

  • オーツヘイ
     新穀の収穫は各地域で概ね完了しました。
     6月から7月に降雨に恵まれましたが、8月は少雨傾向となりました。これを受け西豪州の一部地域では収穫量の減少が懸念されていますが、他の地域では生育状態が維持できており良好な収穫量が予想されています。収穫期の雨当たりが少なかったことを受け、今年は上位グレードの発生が中心になる見通しです。
     下位グレードに関しては、旧穀の産地在庫は比較的余裕のある状況でしたが、9月29日に中国政府が豪州産オーツヘイの輸入を再開したことを受け、主に中位~下位グレードを中心にオーツヘイの需給は引き締まることが予想されます。
  • 小麦ストロー
     旧穀に関して、産地在庫は払底に近い状況です。
     新穀について、小麦ストローが圃場でベーリングを待っている状態で、年末年始にかけてヴィクトリア州から東豪州にかけてまとまった降雨がありました。これを受け、ロングタイプ(穀物を収穫し、ストローは圃場に立ったまま残して、後日長いまま収穫してベーリングするタイプ:農家との事前契約生産品)の良品供給余力はひっ迫しています。チョップタイプ(収穫機械で穀物とストローを同時に収穫し、ストローはカッティングして圃場に撒いたものを集荷するタイプ)についても雨当たりによる品質劣化が懸念されていますが、農家との事前契約生産品であるロングタイプよりも構造上生産量が多いため、平年程度の需要量であれば大部分を良品で賄える見通しです。

6. 海上運賃

 北米航路、豪州航路について、一部動静の遅延が発生しています。
  1. 北米航路
     太平洋岸南西部(PSW)の貨物を船積みするロサンゼルス/ロングビーチ(LA/LB)港についてはおおむね正常通り稼働しています。しかしながら日本直行便の本数も限られており、同一本船への集中は続いています。今後もブランクセーリングなどの動静に注視が必要です。
     太平洋岸北西部(PNW)の貨物を船積みするシアトル/タコマ港、ポートランド港発の貨物について、ポートランドにおけるコンテナ機器不足が発生しており、動静遅延・デリバリーに支障が出ています。ポートランドのコンテナ機器不足は慢性的な状況となっており、春先まで解消する見通しは立っていません。
  2. 豪州航路
     豪州海事労働組合(MUA)と港湾オペレーターであるDPワールド・オーストラリアの労使協定が2023年9月末に期限切れとなり、新たな協定の合意までの間、同社の運営する、ブリスベン・シドニー・メルボルン・フリマントルの4港を対象に、10月上旬から断続的に争議行動によるスローダウン・ストライキが発生していました。このため、豪州航路の大幅な遅延が発生しておりましたが、2月2日に原則4年間の新たな労使協定が批准されました。しかしながら作業の遅延の回復には時間を要す見通しで、解消には数週間かかる見通しです。今後の動静に注視が必要です。

以上

令和6年2月26日
全国農業協同組合連合会(JA全農)

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